ホーチミン、旧正月を祝う街と人に出会う旅

(本稿は友人からの寄稿です)

2月。前日から雪が降り、東京にしては珍しく積雪となった朝。空港に行くバスの中で、飛行機は出るのかを気にしながら成田に向かいました。
空港に着くと人、人、人。前日からの泊まり込みの人もいて、床に寝転がったりみんな気怠そう。予約したホーチミン行きのベトナム航空は一応出発予定となっていて、チェックインができました。その後、暫く待たされましたが、出発時間を少し遅れただけで離陸。次に到着するのは、大好きな街、ホーチミン。心がウキウキするのを止められませんでした。

大晦日を迎えるホーチミンの人々と街の様子

旅行ガイドには必ず「ベトナムの旧正月はお店が休みになるので避けましょう」というアドバイスが書いてあります。でも私はあえて旧正月を目当てにホーチミンへ行ったのです。
到着した日は現地の暦で考えると大晦日の前々日。現地時間の夕方に空港に到着、タクシーを待つ列に並ぶと、周囲のベトナム人は日本からのお土産らしいウォシュレットやらパンパースの箱、リンゴの箱を山積みにし、重そうにカートで運ぶ人がたくさんいました。

そこに交じって、国内線で到着したらしい人たち。彼らは一様にキンカンの鉢植えや、桃の花の束を持っています。この2つは、ホーチミンで新年を祝うためには欠かせない飾りなのです。
タクシーに乗り、ホーチミンでの定宿となりつつあるホテル「ルネッサンス・リバーサイド」と行き先を告げ、通りへ出るとバイクの大群が押し寄せてきます。

これもベトナムのお約束のようなもの。でも初めて来た5年前よりも、車が増え、そしてバイクもきれいなものが増えたのがわかります。こんなところにも、ベトナムの急激な経済成長ぶりが感じられます。
通りのあちこちで、桃の花や飾りを売る人が次々に立っています。バイクにお父さんとお母さん、さらに2人の子供まで乗せて、桃の花を子供に持たせている家族。ベトナム人は家族でバイクに乗るのが娯楽の一種なのです。街全体が、なんとなく浮足立っている感じ。まさに日本の大晦日に近いざわめきを感じながらホテルへ到着したのでした。

大晦日のホーチミンは、一年で一番静かな日

翌日は大晦日。ほとんどすべてのお店が午前中で閉まります。そのためお土産を買う人は、急いで午前中に済ませなければなりません。でも大晦日より前から休業のお店もあります。それはたいてい仕立屋さん。ベトナムでは新年に新しい着物を着る風習があり、縫子さん達はお正月の直前1か月、ほとんど休む間もなく働き、ボーナスを手にして故郷へ帰るのです。

そう、お正月はやはり故郷の家族と一緒に過ごす、大切な一日。ですから半日でお店を閉めて、お正月の準備をしなければなりません。いつもは観光客やバイクで賑やかな目抜き通り、ドンコイ通りも閑散としています。

1年でこの日しかない静けさを楽しみながら、ランチを終えてホテルへ戻ります。ホテルの入り口にもにぎにぎしくくだものや花かごが飾られ、赤地に金の文字の飾りが付けられています。このホテルは名前の通り、サイゴン川に沿って建っているのがポイント。

クラブフロアに宿泊すると、フロア利用者専用のサロンがあり、そこからサイゴン川とその周辺の道路が見渡せる、絶好の立地なのです。そのサロンにも、立派なキンカンの木に桃の花や金色の様々な装飾が施されてお正月気分を醸し出しています。

ホーチミンのカウントダウンとお正月の様子

夜7時近くになると、ホテルの足元にある川沿いの道がバイクで混み始めました。たくさんのバイクが次から次に、まるで砂糖に群がるアリのようにやって来て、ぎゅうぎゅう詰めに。

なぜって?それは12時のカウントダウンに、サイゴン川の上手で盛大に花火があがるからなのです。地元っ子はこれを楽しみにして、家族中がバイクに乗って見に来るのです。

12時までまだ5時間もあるのに、待つのは平気。ぎゅう詰めのそのバイクの間を、飲み物やアイスキャンデーの売り子が歩いています。隣のホテルでは早々に、邪気を払うという獅子舞がやって来て、賑やかさを盛り立てます。

途切れなくバイクが集まり、ついに見渡す限りの道がバイクで埋め尽くされました。もうぎちぎちで身動きがとれません。そしてついに12時。盛大に花火があがります。これも以前より格段に立派になりました。やはり経済が順調に発展してせいでしょう。

見ている人はみんな大声で笑ったり、話したり。30分ほどで花火が終わっても、バイクはなかなか動けません。渋滞が解消したのは、午前3時のことでした。

翌日はお正月。ホテルの前では子供たちも混じった曲芸談による獅子舞が披露されます。ホーチミンの獅子は日本の獅子舞よりももっとアクティブ。高い棒によじ登ったり、高低差のある踏み台を器用に飛び回ったりします。見物しているホテルの宿泊者から盛んな拍手がよせられ、最期は獅子が丸いレタスを割って、景気よく新年を祝います。レタスがより細かく、八方に飛び散る方が縁起がいいのだとか。ホテルでも宿泊客全員に小銭が入った赤い封筒で「お年玉」を配ります。

そしてベトナム人はお正月の最初のお客様を選ぶのだとか。その人が1年の幸運を決めるからです。ですから呼ばれてもいないのに、ベトナム人の家やお店に入ってはいけません。彼らは知り合いの中で最も裕福な人、出世した人など「福」をもたらしてくれる人を手配していて、その人が来てからでないと他の人を家にあげないのです。

おわりに

最初のベトナム訪問に、旧正月期間は向いていないかもしれません。お土産物を買うこともできませんから。でも2度目、3度目のチャンスがあったら、ぜひ旧正月の時期に訪れることをお勧めします。

ベトナム人の素顔を垣間見ることができるからです。彼らが普段、どのように生活し、家族を大切にしているか。お正月をどれほど神聖な気持ちで迎えているか。

私達日本人が忘れかけている新年を心から神聖なものとして祝う、そんなベトナムの人と街が見られる貴重な体験になることでしょう。

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